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臨床心理士 ミサト先生からのお便り

更新日:2023年5月12日

先日はお話を聴いていただきありがとうございました。アンケートより、皆様のお声も届けていただいたこと、感謝しております。


親が試行錯誤している姿が、子供に勇気を与える


私のスピーチの中で、"子どもの抱いている本来の困り感を見つけるためには"ということをお話ししましたが、生活の中では本来の困り感が分からないということもたくさんあると思います。そういった時に、"何に困っているんだろう"と試行錯誤されている親御さんの姿こそが何よりも大切なんだと私は思います。頂いた皆様のお声から、日々お子さんと向き合って試行錯誤されている様子が窺え、そのような姿がお子さんに伝わり、試練に立ち向かうエネルギーや勇気になるのだと思いました。


社会で子育てを


子育てとは、家庭だけではなく社会で行うことだと私は考えています。何か困ったことがあれば周りの話せる人などに話して、みんなで知恵を出し合って引き出しを多くしていけたら心強いと思います。そういった大人のコミュニティ作りが子どものコミュニティ作りのお手本になったり、子どもが困った時にヘルプを出すきっかけになったり、引き出しが増えたりと、試行錯誤の幅を広げることに繋がっていくのではないでしょうか。


実体験ストーリー①


ここで少し、私の実体験をご紹介します。お友達のおもちゃを横取りして喧嘩になって叱られていじけていたお子さんに声をかけることがありました。


上手く行かなかった対応


この時の上手くいかなかった対応として、癇癪真っ最中に声をかけても落ち着かず、話を聞くどころか、激昂してしまうことがありました。また、本人の気持ちに対して丁寧な共感ができず、喧嘩になったお友達の気持ちや注意した先生の気持ちばかりに共感を示して説明すると、「自分ばかり怒られる」とまた怒りが再燃することもありました。


取り合いになる前に職員が間に入る?


トラブル場面をなくしてしまおうと考え、おもちゃの取り合いになりそうな時はすかさず職員が間に入り、別の遊びを提示しました。そうすると、その時は気持ちが落ち着いても、職員の数が足りない時は間に入る職員が不在で喧嘩が勃発してしまいました。


おもちゃ使用禁止?ルールを作る?


さらに、あらかじめいつも取り合いになるおもちゃを使用禁止にしても、また別のおもちゃの取り合いになりました。次は枠組みを設けようと考え、おもちゃを使う前にルールを提示してから遊ぶようにすると、少しルールを守ろうとする様子は出てきましたが、我慢ができなくなる場面もやはり出てきました。、、、


というように、様々な対応をして、子どもの反応を見て、また次の工夫をしていきましたが、そう簡単に上手くいく訳もありません。その都度職員同士で話し合い、あれこれ試行錯誤しました。

その時に上手くいった対応は、、、


上手くいった対応としては、おもちゃで遊ぶ前にルール提示をし、ルールが守れなかった時はイエローカードを提示、癇癪が起きた時はレッドカードを提示し、別室でクールダウン・振り返りを行う、そして落ち着くと再度ルール確認や目標を決めて、謝罪が必要な時は謝罪をして再度活動に戻る、という対応を繰り返して続けていくことでした。


どうやって対応策を考えていくのか?


①感情を言語化し、認める。そして共感する

②状況・原因説明。次回からの解決策を一緒に考える。

③最初からうまく行かないことを伝え、繰り返し実践していこうと声をかける。励ます。

④見守る。褒めたり、再度説明したりを繰り返す。



•感情を言語化し、認める。そして共感する


まず私は、落ち着いた時に叱られて悲しい気持ち、少し怖かったこと、おもちゃで遊べず悔しかった、嫌な気持ち等、叱られたお子さんの現在の気持ちを言葉にし、本人に確認して気持ちに共感を示しました。そうすると、いじけている子どもも、この人は気持ちを分かってくれるのかも、と子ども側が話を聞く姿勢を少し作ることができます。それから、本題である叱られる以前のおもちゃで遊びたいという気持ちや、おもちゃが欲しいと思うこと、お友達が貸してくれないと悔しいし、ずるいと思ったかなぁ、とその時の気持ちを推測して言葉にして、本人に確認しました。そして、このような気持ちは感じて良いことを伝えました。


•状況・原因説明。次回からの解決策を一緒に考える。


次に、問題だった気持ちの表現の仕方で、横取りするという表現をしてしまったがために喧嘩になって叱られるという、さらに自分にとって嫌な結果になってしまった、ということを説明しました。その後、また同じ状況になった時にはどうしたらいいのかを一緒に考えました。そして、遊びたい気持ちをお友達に伝えて、それでも貸してくれなかったら、先生に相談して助けてもらうようにすると、喧嘩になったり叱られたりという悪い結果にはならないことを伝えました。


•最初からうまく行かないことを伝え、繰り返し実践していこうと声をかける。励ます。


最後に、今回のような悪い結果にならないためには、今日考えたことを実践してみようと声をかけました。これから練習していくため、ついカッとなって上手く出来ないこともあると思うが、できるだけ上手に言える回数を増やしていこう、と最初から上手くいかないということも見通しとして伝え、励ましました。


•見守る。褒めたり、再度説明したりを繰り返す。


その後は、私たち職員全員で、少しでも子どもが努力している様子や変化が見られた時にはすかさず褒める、上手くいかない時は再度説明を重ねる、というのを繰り返し行いました。そうすると、少しずつ自分の気持ちを自分から言えるようになったり、手を出さずに職員にヘルプが出せるようになってきたりと変化が見えてきました。


これは最終的には良い変化に繋がったお子さんの一例ですが、お子さんによって対応は異なり、状況や環境、様々な事がある中で同じ対応をしても上手くいかないことは多々あります。


ここでもう一つ、現在私が関わっている、学習になかなか取り組めないお子様のストーリーをご紹介したいです。


実体験ストーリー②


上手くはやっている。


最近関わっているお子さんで、学習中ぼーっとして学習に取り組めない子がいます。学力的には遅れがあるわけではないため、これまでの学習の積み重ねはあると考えられます。しかし、学習時間になると手が止まり、取り組むように声掛けをされても鉛筆を持つだけで取り組めないことも多いです。日によって波はあるものの他児と比較すると学習量的には明らかに少ないです。本人に理由を尋ねても何も答えられず、自分でも理由が分からないという意思表示をするばかりです。書字を見ても、バランスが悪かったり枠からはみ出る様子はなく、文章理解もできていること、心理検査からも学習障害があるわけではないだろうと推測しています。他児との関わり方を見ても、相手の気持ちの理解が出来ないわけでもなく、それなりに上手くやっています。


気になるところと言えば、


自分から困った時に助けを求めることは苦手で、気持ちを表す言葉の表現はあまり見受けられません。現時点での私の見立てとしては、自分の気持ちに気づいたりどうそれを表現したら良いのかが難しいのかと推測しているところです。そのため、日常の中で本人の気持ちを言葉にして「〜って気持ちがしたかな?」等と伝えて確認するように心がけています。


取り組むことこそが大事


学習以外は特に問題があるわけではありませんが、やはり学習となると取り組めない事が続いています。漢字学習では一文字書くごとに、丸をつけて、しっかり見守っていることを伝えるようにすると、多少は学習が進む様子はありましたが、それでも大きな改善にはなりません。学習初めに目標を決めて行いますが、ハードルがとても低い目標であればクリアできることもありますが、本人の力では余力を持ってこなせる程度の目標であれば、初めから諦めている様子も見受けられます。あれこれ本人に尋ねなごら関わっていますが、現在まだ本人の困りがキャッチできておらず、私も職員もあれこれと工夫してみて、悩んでいるところです。しかし、みんなで本人が何に困っていて、どうしたらその困りを軽減できるのか、試行錯誤しているという、この取り組みこそが大事なんだと思って、私も日々悩んでいるところです。


最後になりましたが、


長いお便りですが、最後まで読んでいただきありがとうございました。今回、皆様からのお声を頂いたことで、私も再度自分のこれまでの経験を振り返る良い機会になりました。そして、つたないお便りですが、皆様の子育てにおいて何かしらのお役に立てたら幸いに思います。

最後に、今後も皆様が心身共に健やかにお過ごしくださいますよう、心よりお祈りしております。



ZOEZOEイベント発表会でのミサト先生のお話動画はこちら








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